人間はどうするの???
【IZA11/21-「美術品を守れ」 イスラエル、地下に避難】
14日にパレスチナ自治区ガザへの空爆を始めたイスラエルは、20日も攻撃を続け、パレスチナ側の死者は110人を超した。イスラエルのネタニヤフ内閣はガザ地上侵攻の準備を進める一方で、エジプトを仲介にした調停の行方を見極める方針でおり、地上戦が回避されるかどうか、ぎりぎりの局面が続いている。一方で、イスラエルは貴重な美術品の地下倉庫などへの避難を開始した。美術品の避難は湾岸戦争時以来の21年ぶり。ガザからのロケット弾が15日、初めてテルアビブ沖の地中海に着弾したことに国民が大きな衝撃を受けたことの表れとみられ、緊張感が高まっている。
■湾岸戦争以来の騒ぎ
イスラエル随一の美術館であるテルアビブ美術館では、先週末から所蔵品の倉庫への避難を始め、19日までには、所蔵する約200点の絵画はギャラリーから姿を消した。AP通信によると、避難した絵画の中には、ベルギーのピーテル・ブリューゲル(1525?~69年)とその子供たちの名画約100点も含まれているという。テルアビブ美術館の上級キュレーターのドロン・ルリー氏は「作品は私たちにとって子供に等しい。有事に備えて避難させるのは、母が子供を思う気持ちと同じ」と話している。
こうした動きはイスラエル国内の他の美術館でも広がっており、西部のアシュドド美術館でも19日から作品の避難作業を始めた。キュレーターのユバル・ビトン氏は「この期に及んで何もしないでいたら、不作為をとがめられる」と語る。
イスラエルで美術品の避難騒ぎが起きたのは、湾岸戦争時の1991年に、イラクが撃ち込んだスカッドミサイルがイスラエルに着弾して以来だ。2008年暮れから09年初頭のほぼ3週間にわたって、イスラエルがガザ地区を空爆した際にも、ガザ地区のイスラム原理主義組織ハマスからはロケット弾が撃ち込まれたが、射程は短く、いずれもイスラエル南部に着弾し、最大都市のテルアビブや首都機能が集中したエルサレムには遠く届かなかった。
■中心都市飛来に衝撃
しかし今回、ハマスはロケット弾にイラン製のファジル5を使用。テルアビブやエルサレムを射程に置き、攻撃を繰り返している。これまでに約550発のロケット弾が撃ち込まれたとみられるが、イスラエル側の死者が3人にとどまっているのは、昨年春に配備したばかりの対空防衛網「アイアンドーム」のロケット弾迎撃能力が優れているからだ。エフド・バラク国防相(70)は「迎撃の成功率は90%」と主張している。
ただ、迎撃にかなりの確度で成功しているとはいえ、実際にイスラエルの中心都市の上空にロケット弾が飛来しているのは事実で、テルアビブでは連日サイレンが鳴り響いている。
国内に衝撃が走っていることは間違いなく、来年1月に選挙を控えたベンヤミン・ネタニヤフ首相(63)も弱腰はみせられず、ロケット弾攻撃が完全にやむという確証が得られなければ、停戦には応じない方針だ。ただ、地上侵攻という事態になれば、イスラエルの犠牲者も増える上、国際社会の非難が高まることも必至であり、本音は避けたいとみられる。美術品の避難が徒労に終わることを、国際社会も願っている。
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