女性器切除は大人への儀式、性欲抑制・貞操保護の目的で、女性外性器の一部あるいは全部の切除、時には切除してから外性器を縫合してしまう慣習である。アフリカを中心に様々な民族の伝統的な通過儀礼として、2000年以上も続いていると言われている。
「女性性器切除」(FGM)について、2012年12月1日、国連加盟国に禁止の法制化を強く求める決議案が人権問題などを扱う国連総会第3委員会で採択された。法的拘束力はないが、「女性性器切除」(FGM)を続ける地域に対し、国際社会が根絶を後押しするものである。
決議案は、性器切除を「女性に元に戻すことができない傷を負わせる虐待」と非難し、全世界で1億から1億4千万人がFMGを行われ、現在も毎年推定300万人以上が切除をされていると警告している。今後、根絶に向けた啓発教育に取り組むよう求めている。
衛生的な観点から見れば、誠に危険な切除である。しかし、2000年の歴史を変えることは簡単ではない。2000年の秩序がこれを止めることによって変化する。どのように変化をするか分からないが、確実に何かが変わる筈である。
明治政府はアイヌの女性の口への刺青を止めさせた。この刺青を失くしたことで、アイヌは確実に変わっていった。国連は女性への刺青を禁止してはいない。さて、どう変わるのだろうか?
【IZA12/28-《世界人間模様》ケニア 少女を傷つける「悪習」と闘う】
アフリカや中東などで因習として続く女性器切除(割礼)。人権侵害と国際的に批判されるが、根深い迷信から各地で「文化」とみなされ、根絶は程遠い。ただ近年、地元の女性自身が抗議の声を上げ始めている。「有害な習わしから少女たちを守りたい」-。ケニアで反対運動を推し進める牧畜民マサイの女性活動家に会った。
■14歳で女性器切除
雄大な渓谷が広がる大地溝帯に近い南西部ナロック。アグネス・パレイヨさん(56)の保護施設には、女性器切除や強制結婚を逃れた少女約50人が身を寄せていた。
「サバンナの貴族」とも呼ばれる勇敢なマサイ民族は男性優位社会で、女性は早ければ10歳前後で家畜などと引き換えに、父親の決めた相手と結婚させられる。女性器切除は大人への通過儀礼とされ、施術が済んでいない女性は婚姻対象外とみなされる。
パレイヨさん自身も14歳で切除を受けた。「麻酔なしで無理やり刃物で切り取られ、傷口を治すという理由で尿をかけられた」。自分の子供には同じ苦痛を経験させないと決意し、結婚後、女性運動と関わり始めた。
■保護施設立ち上げ
1993年に地元で調査を行い、次々と少女が学校をやめるのは結婚や女性器切除が要因と把握。女性器の木製模型をつくり、各学校を回って切除の危険性を教えたが「当初は気が狂ったと思われた」と苦笑いする。
だが、数年の間にパレイヨさんに助けを求める少女が急増し、外国の女性組織の支援を得て2000年に保護施設を立ち上げた。
ケニア政府はその後、法律で女性器切除を禁じたが、今もマサイを含む複数の民族が続けており、保護施設に駆け込む少女の数は減っていない。
■政界進出、啓発運動
パレイヨさんは、保護した少女と家族の和解にも取り組んでいるが、地域社会は保守的で受け入れられない事例も多い。
「父はまだ私を無理やり結婚させたがっているの」。6年前に保護されたレベッカさん(17)はその後一度も父親と会っていない。10歳で受けた女性器切除について尋ねると、苦しげな表情で「悪いこと」と漏らした。
「政府が真剣に対応しない状況を変えるため、女性の政界進出が必要」と訴えるパレイヨさんは、地元ナロック県の議員を務める傍ら、模型を使って啓発運動を進める。
多くの嫌がらせをはね返してきたパレイヨさんは「私は闘い続ける」と力強く誓った。
(ナロック 共同/SANKEI EXPRESS)
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■女性器切除 大人への通過儀礼や女性の性欲抑制、貞操保護などの名目で、古代からアフリカを中心に因習として続いてきた。イスラム教徒だけでなく、キリスト教徒や伝統宗教信者も行っている。世界保健機関(WHO)は切除する部位や方法で大きく4タイプに分類。施術によるトラウマ(心的外傷)や排尿痛、難産などの障害が指摘され、大量出血や感染症で死亡するケースも多い。WHOによると現在もアフリカ28カ国と中東、アジアの一部で実施。毎年新たに約300万人が切除対象になっているとみられる。国連児童基金(ユニセフ)は「女性の人権侵害」と批判。20世紀以降、法律で禁止する国が増え、近年の調査によると被害は徐々にだが減少傾向にある。
女性器切除の4タイプ
タイプ1: クリトリスの一部もしくは全部分の切除を伴う場合もあるクリトリス包皮の切り込み (クリトリデクトミーあるいはスンナ式とも呼ばれる)。
タイプ2: 小陰唇の一部あるいは全部の切除。縫い合わせや、閉じる場合もある。
タイプ3: 外性器の一部あるいは大部分を切除した後、大陰唇を縫い合わせたり、狭めたり閉じたりする(外性器縫合)。
タイプ4: 上記3タイプに分類できないもの。クリトリスあるいは小陰唇を引き伸ばす、クリトリスとその周辺を焼く、処女膜の環を切り取る(アンギュリャ切除)、膣の切除(ギシリ切除)、膣から血を出すあるいは膣を狭める目的で膣に薬草などを入れる、など。
国連機関の報告によれば、タイプ1が行なわれることは少なく(全体の5%)、タイプ2が最も多く行なわれている(80%)。一番深刻なタイプ3はFGM全体の15%で、ジブチ、ソマリア、スーダン北部などに多い。―Women's Action Against FGM, Japanより引用―
http://www.jca.apc.org/~waaf/pages/FGM/FGM.html
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