写真は養子縁組で腎臓を提供した堀内竜哉被告(21)/テレ朝動画ニュースより
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/211109038.html
今回の事件で、暴力団は金のあるなしに関係なく収奪していることがよく分かる。以下の「暴力団・ヤクザの逮捕・裁判ニュース」サイトで関係者の構図と写真を見ながら、IZAの記事を読むとさらによく理解ができる。
http://yakuzataiho.seesaa.net/article/211874815.html
この事件で感じるのは、なぜ海外で腎臓移植をしなかったのかと言うこと。堀内医師も中国での移植の危険性を感じていたということか?それとも既に暴力団に雁字搦めにされていたのか?暴力団は金のニオイと弱みには敏感であることを再認識させられた。
【IZA11/13-27歳年上の医師の妻との不倫、代償は“ガテン系奴隷生活”】
人生の再出発を賭けた腎臓の提供は、新たな“地獄”の始まりだった-。生体腎移植をめぐる臓器売買事件で、臓器移植法違反(臓器売買の禁止)などの罪に問われ、9日に東京地裁で開かれた男性被告(21)の初公判。臓器提供者(ドナー)の被告が約束の報酬を受け取れず、手術後も「軟禁」されるに至った意外な理由が、法廷で明らかにされた。(時吉達也)
起訴状と検察側の冒頭陳述によると、被告は臓器提供仲介役の暴力団関係者らと共謀し、昨年6月、腎不全を患い腎臓の提供を求めていた男性医師(56)=公判中=と虚偽の養子縁組届を提出。翌月に腎臓移植手術を実施し、謝礼として800万円を受け取ったとされる。30万円を借りていた知人のアルバイトの男(30)=同=から「借金を返し、余裕もできる」と誘われたのが犯行に関与するきっかけで、被告自身は手術前後に20万円を受け取ったという。
被告は保釈されており、この日はスーツ姿で出廷。公判の冒頭、「自分がその場におらず、逮捕後に初めて知ったことも多い」とした上で「間違いない」と起訴内容を認めた。
一連の事件では被告を含む9人が起訴され、被告以外の8人はすでに公判中、または判決言い渡し済みだ。冒頭陳述や検察側の証拠調べの内容は多くがこれまでの公判で明らかにされているものだったが、検察官はその途中、共犯者の供述調書として医師の妻(48)=同=と被告に関する“新事実”の読み上げを始める。
検察官「○○(医師の妻、法廷では実名)は手術を前に被告が逃げないよう、監視役として一緒に寝泊まりしていたが、情が移って肉体関係を持つようになり、2人は『術後は結婚しよう』と将来を約束した」
臓器移植の仲介を主導し、自身の初公判では犯行について「夫を救いたい一心だった」と発言していた医師の妻との不倫関係。検察官はこの問題が発覚したことで、被告は受け取り済みだった謝礼を仲介者に没収された、と続けた。
その後の弁護側の証拠調べで、弁護人は被告が事件以前から内縁の妻、妻の子供2人と同居していることを説明。「落ち着いたら入籍し、被告を監督していく」という内縁の妻の言葉が紹介されるが、夫の“裏切り”が直前に明らかにされており、どこか哀れに響く。
公判はここから、被告人質問に移る。弁護側は、被告が犯行に加わるまでの苦境を明らかにしていく。
家族との衝突で高校を1年で中退、上京しパチンコ店員として勤務していた被告。上司との対立で仕事を辞めた際、店の常連客で顔見知りになっていたアルバイトの男に就職の斡旋を頼んだのが、悲劇の始まりだった。
弁護人「相談して、どうなりましたか」
被告「『すぐに紹介できないから、しばらく自分でも探しておけ』と言われました。そして『いろいろ費用がかかるだろうから、仕事が始まるまで貸してやる』と、9万円ちょっとを貸してくれました」
弁護人「その後はどうなりましたか」
被告「先輩・後輩みたいな関係になり、パチンコの『代打ち』をさせられました。ほぼ毎日、週5日はやっていました」
弁護人「就職活動をしなければいけないのに、断らなかったんですか」
被告「金を借りて面倒を見てもらっていたので、恩返しのつもりでした」
無職生活は約3カ月続き「週1回程度で1~2万円渡され、ケータイ代も支払ってもらい」、男からの借金はさらに増えていったという。男の紹介で建設会社に就職するころには、被告はすでに“あやつり人形”と化していた。
弁護人「給料はもらっていましたか」
被告「給料袋の封を開けずに××(アルバイトの男、同)さんに持っていき、そこから渡される仕組みになっていました」
弁護人「給与明細は見ていたんですよね。いくら引かれたんですか」
被告「多い時で10万円以上持っていかれていました。5、6カ月続き、借りていた30万円ほどは返したつもりでした」
被告は給料の多くを男に搾り取られ、家族3人との生活のためにガソリンスタンドでの夜間バイトも掛け持ちすることに。「朝晩働きっぱなしで、(疲労で)実際に吐いていた」生活に限界を感じていたころ、男から臓器提供の話を持ちかけられた。
被告「『お前は俺に、100万円の借金がある。借金をチャラにするいい話がある』と言われました。『100万円』にびっくりしたが、世話になっていたのもあるし、自分もしっかり計算をしていなかったので、言い返しませんでした」
流れに身を任せるまま、違法臓器売買のドナーとなった被告。男を通じて暴力団が仲介役にいることを知り、「下手をしたら消されると思い、投げやりな気持ちになった」という。
そして、手術後。「借金が棒引きされ、生活をやり直せる」という淡い期待も打ち砕かれる。被告と医師の妻との関係が医師に発覚することを懸念し、仲介役らが謝礼を没収、被告を監視下に置くようになったためだ。弁護側はその後の状況について、質問を続けていく。
被告「(監視役の)△△(同)さんという人に『持っている金を全部出せ』と言われ、一緒に暮らすことになりました。『自分の金は自分で稼げ』と言われ、働きにでるようになりました」
弁護人「稼いだ金はどうなったんですか」
被告「△△さんにいきました。1日に1千円から2千円くらい、食費だけもらいました」
弁護人「手術直後で、体は大変だったんじゃないですか」
被告「完全に治っておらず、痛みがありました。コンビニと運送会社の仕事の掛け持ちは相当きつかったです」
被告はその後、以前の職場を通じて内縁の妻とようやく連絡を取り、監視役の男の家から脱走。身を潜めるうちに、事件が発覚したという。
トラブルの原因となった“男女関係”には触れないまま、手術後の過酷な状況を振り返った弁護側。一方、検察側や裁判官は遠慮なく質問をぶつけていく。
検察官「(医師の妻に)誘われて、我慢できなかったと。依頼者の医師の奥さんに手を出せば、どうなるか考えなかったんですか」
被告「投げやりな気持ちになっていて、考えることもなくやってしまった。やった後で後悔しました」
裁判官「○○との関係がなく、事件が発覚していなかったら、どんな生活を送っていたと思いますか」
被告「想像つかないですが、それなりに後悔していたと思います」
裁判官「結局、謝礼が支払われなかったのは、さっき言ったような事情があったわけですよね」
被告「え?」
裁判官「ですから○○との関係がばれるという懸念で、監視役と一緒に生活させられるようになったんですよね。普通にやっていればお金をもらっていたと思うけど、受け取っていたらどうなっていたと思う?」
被告「後悔しつつ、普通に生活していたと思います」
裁判官「借金も済んで、お金をもらい、事件も発覚していない。そうしたら犯行を軽く考えていたんじゃないですかね」
被告「以前の自分がそうだったので、それは考えられます」
「投げやりに」借金を増やし、「投げやりに」犯行に加わり、「投げやりに」医師の妻と関係を持った被告。裁判官は最後に、穏やかな口調で諭す。
裁判官「生き方全体を含めて、どうしてもっと自分を大切にしないんですか。結婚する予定なんですよね。自分を大事にせずに、一緒に生活を送る人たちを守れるんですか」
実際以上の借金返済に苦しみ、腎臓を奪われた上、軟禁生活で奴隷のように働かされた日々。被告は“被害者”の思いを捨て、裁判官の言葉を受け入れることができるだろうか。論告求刑公判は25日に開かれ、結審する。