写真は在りし日のラルフ・スタインマン教授/YouTubeより
http://www.youtube.com/watch?v=v4PuFbp0hJM
4年前に膵臓がんと診断され、自ら研究対象としていた樹状細胞を使った免疫療法により延命していたという。教授の死の三日後にノーベル医学・生理学賞の受賞が発表された。故人への授賞は極めて異例なことであるようだ。この分野では我が国の審良静男教授もノーベル賞の有力候補とされていた。
【IZA10/3-ノーベル賞受賞者、死去していた】
AP通信は3日、今年のノーベル医学・生理学賞受賞が決まったラルフ・スタインマン教授が9月30日に死去していたと報じた。(共同)
【産経10/3-医学・生理学賞のスタインマン博士は「超人」 日本人弟子語る】
ラルフ・スタインマン博士に師事した理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫治療モデル開発ユニットリーダー、清水佳奈子さん(42)は「休日も体調が悪い日も研究に打ち込む超人。10年ほど前から受賞を待っていた。本当にうれしい」と話した。
博士は世界で初めて免疫細胞の一種「樹状(じゅじょう)細胞」の役割を解明。白血球の中に含まれ、樹木のような突起があるのが特徴で、がんの免疫治療やエイズウイルス(HIV)の治療などさまざまな分野へ応用研究が広がっている。
清水さんは2000年~02年、米ロックフェラー大学で博士の下で樹状細胞を研究した。「研究に対し真摯(しんし)な人。海外で学会がある際は大量の論文を機内に持ち込み読み進めていた」と振り返った。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/111003/scn11100321290006-n1.htm
【日経10/3-ノーベル賞受賞のスタインマン氏、既に死去と判明】
生理学・医学賞、米のボイトラー氏ら3氏と発表 2011/10/3 22:33 (2011/10/3 23:05更新)
【パリ=古谷茂久】スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2011年のノーベル生理学・医学賞を、人間や動物の体で働く免疫の働きに関する研究成果をあげた米国とフランスの3人に贈ると発表した。このうち米ロックフェラー大学のラルフ・スタインマン教授(68)について、同研究所の発表後に大学側が「9月30日に死去した」と発表。ノーベル賞は存命中の研究者への授賞が原則で、今回のケースは極めて異例だ。
他の2人は米スクリプス研究所のブルース・ボイトラー教授(53)、フランス・分子細胞生物学研究所のジュール・ホフマン前所長(70)。
授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで開く。賞金1000万クローナ(約1億1200万円)は半分はスタインマン氏、残りをボイトラー氏とホフマン氏で分けるとされた。
免疫は体に入り込んだ異物を認識して排除する仕組み。人間はこのシステムによって様々な病原体などから体を守っている。ホフマン氏はハエ、ボイトラー氏はネズミを使い、異物が侵入した際に最初に攻撃を仕掛ける「自然免疫」の仕組みを解明した。
自然免疫には異物を感知する特定のたんぱく質が関わっており、実験的にこのたんぱく質を失わせたハエはカビなどに感染してしまうことが分かった。自然免疫は人体では本格的な免疫系が働き始まる前にまず敵を短期攻撃する仕組みとして機能しているとみられる。人間で初めて自然免疫の働きを明らかにした研究者としては、大阪大の審良静男教授が知られる。
一方、スタインマン氏は免疫に関わる様々な細胞の中でも重要な役割を果たす「樹状細胞」を発見した。同細胞は外部から侵入した細菌などを探し出して特定し、免疫機能を担う別の細胞にその情報を伝える。これによって特定の侵入者を殺すための、複雑で強力な免疫の仕組みが作動することを解明した。
免疫は自分の体を異物と間違えて攻撃することもあり、アレルギー症やリウマチなど様々な病気の原因にもなっている。3氏の成果は感染症やがん、炎症の治療などに応用されている。